巻頭言
難病との出会い
松家 豊
1
1国立療養所徳島病院
pp.567
発行日 1985年8月10日
Published Date 1985/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105424
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厚生省指定の難病は,昭和47年以来,難病対策要綱に基づき諸外国には例のない医療の推進がはかられている.組織的研究と医療施設の整備によって病因の究明と治療法の開発が急がれているところである.この根本的治療法のない難病に対してリハビリテーションの果たしてきた役割は大きいといえる.特に神経系,運動系の難病ではリハビリテーション医学が治療の主軸となっているのが現状である.
難病の最たるものである進行性筋ジストロフィー症についてみた場合,なかでも頻度の高いデュシャンヌ型はマスコミにも常にとりあげられる代表的存在である.この文献上の歴史は百年余であり,こと治療面の研究は20年そこそこといえる.これは丁度わが国のリハビリテーション医学会の誕生と期を同じくしている.幼児期に発症し20歳代で生涯を終える宿命は10数年の罹病期間を有し,人生80年の4分1に過ぎない.その人生の大半を病院で生活する場合があり社会復帰はむつかしい.しかもその間には発育期,青年期を通じ運動の制限は進展し極度に達する.一方精神的には不安にかられる極限の状態を抱くに至る.この過程にあって個としての人間的存在を,また,集団の中で個としての存在を意識し行動していくことは想像以上のものがある.この人達とのふれあいを保ち援助するにはヒューマニティーを地でゆくことに他ならない.元来リハビリテーションの出発点もヒューマニズムが根底となる.しかし医療の中で出来ることには限度がある.この極限の世界でたくましく生き,生きたあかしを見出すための即応は容易でない.
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