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はじめに
頸髄損傷(以下頸損)患者の残された僅かな機能に目を向け,限られた範囲ではあるが一歩一歩ADLを獲得してゆくことは患者はもちろん看護者にとっても容易なことではない.さらに脊損患者に見られる褥創,関節の拘縮,尿路合併症など二次的障害がいっそうリハビリテーションの進展を遅らせている場合もある.これらの合併症を急性期からいかに予防するかがリハビリテーション看護の第一歩である1).
実際に援助を行う場合,看護者の心得として以下のことがあげられる.すなわち,その第1は患者をよく理解しておくことである.障害の部位,機能レベルの理解がなければADL訓練を進める場合その目安がわからず,援助の過不足を生じる結果となる.第2は患者に対する不断の観察による気づきである.患者の状態から残された僅かな機能も見落さずにとりあげる看護者の積極性がなければ看護の展開はない.第3には看護のなかの工夫である.失った機能を補う意味で,そこに何等かの工夫がなければ自立には結びつかない.工夫することによって可能性を一つでも多く見出してゆくための努力が必要となる.第4には患者への思いやりと根気である.障害を持つ患者には,精神的苦悩の中から現実を受容し,立ち向かってゆくための精神力が不可欠であり,看護者は常に患者の苦しみを共有してゆく心がまえが必要である.また訓練成果が目に見えてはっきりしない場合にも腰をすえ根気よくとりくみ早急に結論を出すべきでない.第5は家族に看護への参加協力を呼びかけ,かかわることである.入院時から障害に対する理解を深め介助を要する点については実際に体験学習を組み入れ,自己管理のできない患者の代行者としての自覚と技術を身につけて家庭生活に支障が無いように指導する必要がある.
ここでリハビリテーション看護の内容について具体的に紹介するが,紙面の都合上主として回復期から退院までの頸損患者のADL自立という観点から話をすすめる.
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