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まえがき
脳卒中患者有する障害は多岐に渡り,それらを総合的に認識することがリハビリテーション上不可欠である.
一般に「客観的障害」は,機能障害,能力障害,社会的不利の3つのレベルに分けられる1).図1は,脳卒中患者の「客観的障害」の内部構造を概念的に示したものである.これらの障害は原疾患(脳卒中の病型・病変部位・病変の広がり)に規定されるだけでなく,年齢によっても重大な影響を受けると推定され,これらの点を実証的に検討することが必要がある.
特に,機能障害と能力障害が発症直後からどのように変化するかという「障害の回復過程」の研究は,脳卒中患者の早期リハビリテーションを効果的・効率的に行うために重要である.
しかし,わが国では,脳卒中リハビリテーションが専門病院(温泉病院)中心に発達してきたという歴史的制約のため,発症直後からの「障害の回復過程」の実証的報告は極く少ない2,3).欧米では,そのような報告が多数あるが4~7),最近のAndrewsら8)の報告を除けば,対象が特定の少数患者に限定されている.
更に,それらの報告は機能障害あるいは能力障害の単独の回復過程の検討にとどまり,両者の関係(構造)の検討はなされていない.それに対して,両者の関係の検討は,従来,リハビリテーション後の予後予測という目的から,リハビリテーション開始時の機能障害と終了時の能力障害との関係の検討という形で行われてきた.それらの報告の大半は,機能障害の個々の項目(「リハビリテーション阻害因子」)と能力障害(特に歩行障害)との関係を個別に検討したものであったが,最近では,多変量解析の手法を用いて,より総合的な検討を行った報告9~18)も増えている.
しかし,それらはいずれも,リハビリテーション開始時の機能障害と終了時の能力障害との関係をいわば間接的に検討したにとどまっており,発症直後から,両者の関係(構造)がどのように変化するかを検討した報告は全くみられない.
筆者は,発症直後に入院し,早期からリハビリテーションを開始し,しかも長期間(6月間)経過を観察しえた脳卒中患者を対象として,機能障害と能力障害の回復過程および年齢,脳卒中病型がそれらに与える影響を,総合的に,多変量解析の手法等をも用いて検討したので報告する.
この第1報では,機能障害の中核をなす片麻痺と能力障害の中核をなす起居移動動作能力(の障害)の回復過程と両者の関係の変化,およびそれらに年齢が与える影響を検討する.
第2報では,機能障害各項目の内部構造,およびそれら全体と能力障害(起居移動動作能力)との関係の発症後変化を検討する.更に,第3報では,能力障害全体(起居移動動作と身の回り動作)の内部構造およびそれの発症後変化を検討する.なお,機能障害・能力障害と社会的不利との関係については,別の機会に報告する.
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