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はじめに
慢性関節リウマチ(以下RA)の治療のうちで,コルチコステロイドの上手な使い方は,患者の日常生活動作(ADL)を保持させ,関節の変形・拘縮・強直などを予防するために特に重要な意味を持っている.経口的投与では,必要最少限を使って副作用を抑えるような方法が確立されつつある.しかし,関節内注入(以下関注)に関しては,好んで行う人と極端に嫌う人があって,後者は,習慣性になるとか,骨の破壊が促進される.感染が起こるなどの理由でちゅうちょしている.
一方,他の薬剤でコントロールできないRAに対する関注の劇的効果,特に拘縮の予防・改善,関節可動域(ROM)の保持など,リハビリテーションにおける有用性を知り,好んで使っている医師にとって,コルチコステロイド関注のデメリットを知ることも大切なことである.
複雑な経過を示すRAの自然経過による関節の破壊が,ステロイド注入によってどの程度影響を受けるか,すなわち,止むなくステロイドを使う重症のRAの炎症の強い関節は,繰り返しの注入によって果たして破壊が促進されているのか,逆に炎症が抑えられて,かえって骨・軟骨の破壊が遅らされているのかを判定することは,大変むずかしい問題であるが,そろそろ結論が出されるべき時期にきていると思われる.
Thornが1950年10mgのHydrocortisoneを初めてRAの膝へ注入,1951年Hollander1)は,Hydrocortisone25~37.5mg注入のRA膝への効果の持続は平均8日であると述べ,さらに,Prednisolone t-butyl Acetonideなどの効果持続10.7日に比しTriamcinolone Acetonide t-butyl Acetate30mgの注入の効果持続は,平均19.8日と長い2)ことを示した.また,ステロイド関注の総説の中で3),関注後2週間も滑膜中にステロイドが発見でき,Hydrocortisone Acetateは平均6日,Hydrocortisone t-butyl Acetateは12日,Prednisolone t-butyl Acetateは14日平均の効果持続があるとし,Kendall4)は,Triamcinolone HexacetonideがTriamcinoloneより水にとけにくいので効果が長続きし,20mgはMethylprednisolone40mgより,自覚的に5.4日長持ちし,平均すると19.8日も効果があったと述べ,製剤による効果の差がわかってきている.
われわれは今まで20年近くにわたって,RA患者に延べ3万回以上(膝関節が約半分)コルチコステロイドの関注を行ってきたが,この15年間はほとんどTriamcinolone Acetonide(TA)水性懸濁液を使用している.有効性が高く,効果の持続が長い5~12)こともあるが,比較的濃度が薄いので,大関節に対して,1ml以上使えること,5ml入りのバイアルが使いやすいことが主な理由である.
今回は,長期間治療しているRA患者の膝関節内へのTA長期反復注入例について,治療前後のX線所見を比較して,骨・軟骨破壊とステロイドの注入総量,注入間隔,注入回数,注入期間との関係を調べ,ステロイドの効果持続の調査と合わせて,RAのコルチコステロイド関注の臨床的な規準を決める目的で種々の考察を加えた.
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