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まえがき
リスクとは好ましくない事態の出現を予想する確率であるとある人は説明し,傷病へのリスクを高める要因をリスクファクターと呼んでいる.さて,慢性関節リウマチ(以下,RA)のリハビリテーションにおけるリスクというテーマを与えられて考えさせられることは,RAなる疾患はその大部分の症例がpolycyclic progressiveな病態あるいは経過を示すものであると同時に,症例毎にその予見が極めて困難であるという疾病特異性を有しており,単なる機能回復的アプローチのレールの上をほぼ決められた方法を用いて,逐次リハビリテーションを行いうるいくつかの他の疾患とは異なった面が多いということ,また,ある手段を用いることが病態への利益と不利益(ないしはリスク)の両面を有するという矛盾した面があることである.一方からみれば,RAの病態そのものの中に,いくつかのリスクが存在してなおかつそれが漸増したり,他のリスクを惹起するという内部相関,交絡因子,協力効果的要素がひそんでおり,他方,リハビリテーションで用いられる方法,手段にも上述したような矛盾面,対立面が生ぜざるを得ないというまことに複雑な状況下に立たされるのがいつわらざる現状であるといえよう.また,RAの疾患特異性からみて,基礎的療法の中にいわゆるリハビリテーションが含まれている,あるいは見方を変えれば,リハビリテーションそのものが薬物療法をも含む包括的,統合的なものであるといっても過言ではないと考えられ,こうした観点をもふまえた上で以下に述べてみたい.なお,リスクという表現の中に,リハビリテーションの阻害因子とでもいうべきものが入り込んでくる可能性があることを諒承されたい.
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