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はじめに
慢性関節リウマチ(以下RA)は,原因不明の全身疾患であり,長期にわたり関節を中心とする炎症,疼痛を繰り返し,関節の破壊,変形,拘縮,強直をきたすので,リハビリテーション(以下リハ)を必要とするが,薬の使用法などを決める内科,破壊した関節を再建する整形外科,および四肢機能を保持,改善し,日常生活動作を維持させるリハ科の三者が協力して患者を治療しなければ片手落ちになる.しかし,現状では必ずしもこれら三者の協力がうまくいっているとはいえず,全く独立に患者を治療しているところが大部分である.
リハ科で訓練に現われる患者だけをみていても,骨・関節のX線所見がどの程度か,その患者に現在どんな薬がどう使われているかを知るだけでなく,リハの立場で薬の指示やコントロールが出来なければ,関節痛の強い場合の訓練をどの程度すべきかに迷い,結局リハは,おざなりの体操に終始してしまうことになる.従って,RAのリハは,薬の使用,手術の適応までよくわかったRheumatologistが行うのが最もよいことになる.
一方,この10年間の薬の急速な開発で,多くの消炎鎮痛剤,抗リウマチ剤が利用出来るようになって,RAの病状がかなりうまくコントロール出来,その結果,寝たきりにして関節を固めてしまった時代が過ぎ,ADLを長期間保つことが出来るようになったので,RAのリハもこれに応じた対処を迫られることになった.すなわち,長く歩かせることによる荷重関節の変化として,股・膝関節の破壊,頸椎の亜脱臼による脊髄症状,胸腰椎の圧迫骨折などの問題が新しく出現している.
歴史的には,非ステロイド消炎鎮痛剤として,アスピリン万能時代から,アスピリンの剤型の工夫,ステロイド内服,関節内注入の開発,フェニルブタゾン,インドメサシンの時代から,さらに次々と非ステロイド消炎鎮痛剤の開発,プロドラッグや軟膏,坐薬による胃腸障害軽減の試み,抗リウマチ剤として,金製剤,D-ペニシラミンの使用,免疫抑制剤,免疫調節剤の利用など新しい薬の出現があった.それ以外にも,RAには,貧血に対する鉄剤,胃腸薬,種々合併症の治療薬など多くの薬が使われている.
今回のRAのリハと薬剤の問題は,これら多彩な薬の羅列でなく,リハの目的に合わせた薬の使用法に焦点を絞ることにする.
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