巻頭言
リハビリテーション医学の確立をめざして
中村 隆一
1
1東北大学リハビリテーション医学部門
pp.167
発行日 1981年3月10日
Published Date 1981/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104496
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リハビリテーションの定義は「心身に障害をもつ者に,その残存機能を最大限に発揮させ(手段),身体的・精神的・社会的・職業的・経済的能力を回復させること(目的)」という手段―目的から成り立っている.しかも目的には生物的存在から社会文化的存在まで,人間の種々の側面が取り上げられている.しかし日常診療では,このような手段―目的の区分がどれだけ意識されているだろうか.障害の軽減,自立など目的が多く討論され,その手段となると意見は少ない.リハビリテーションは制度的,組織的に体系化されても,そこでの技術の体系化は不十分である.この分野の技術の多くが経験的なもので,科学的根拠に乏しいためだろう.リハビリテーション医学を独立分野として成り立たせるには,単に技術論上の意見一致を求めるだけではなく,それを支える科学的根拠について十分な検討を加えるべきである.また共通した論理や科学哲学も必要とされよう.
たとえば,神経生理学的アプローチには諸家の技術体系があり,それらの説明には共通した神経生理学の知見が利用されているにもかかわらず,現実に意見対立の多いのは何故だろうか.これは問題をすべて神経生理学で説明しようとするからではないだろうか.問題解決には,それに適合した手段が必要である.神経生理学だけを手段として,技術体系を説明するという目的は果たせない.これを解く鍵はどうやら運動障害という言葉の解釈にあるようだ.
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