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1.序文
国は,医療機関から福祉制度の諸組織にまたがるリハビリテーション(以下,リハ)の保健・医療・福祉ネットワークを構築することを督励し,各都道府県はこの線に沿って,リハビリテーション協議会と広域支援センターを設置して,医療機関と福祉施設との相互連携システム構築に向けて活動を開始した.この施策の目的は,急性期の治療から回復期を経て介護まで,リハ医療を遅滞なく体系的に実施できるシステムを構築することである.
長期間の治療と介護を必要とすることが多く,しかも有病率が高い脳血管障害のような特定の疾患では,二木氏が言う保健・医療・福祉複合体が同一系列の中に医療機関と福祉施設を併設して,自己完結的に体系的なサービスを提供するシステムを整えており,この中で救急治療から福祉までが実行されている.しかしこの複合体方式では,脳血管障害を除く他の大部分の疾患は対象外にされてしまうことが多く,しかもこの特殊な組織の多くは人口のまばらな温泉地周辺にできたリハ専門病院を核として成り立っており,大都市圏にはほとんど存在せず,したがってリハを必要とする脳血管疾患患者は,いったん入院した市中の医療機関から遠隔の温泉地に移送されている現実がある.
横浜市立大学でリハ科に併診依頼が多い疾患は,
①変形性関節症・脊椎症・リウマチ・膠原病を含む骨・関節・結合織疾患
②パーキンソン病・脊髄小脳変性症・多発神経炎などの神経・筋疾患
③その他脳・脊髄外傷,脳腫瘍,小児の発達障害,糖尿病,循環器疾患,呼吸器疾患
などである.
これらの大部分は外科・内科系診療科の治療と並行してリハを行う必要があり,それゆえにリハ専門病院に転送されることは少なく,また自己完結的な複合体組職からは疎外されている.
リハ医療は早期開始が必要だと言われ,障害予防が大事な使命だとも言われている.しかし,一般医療機関ですべての疾患に対して障害が顕在化する以前からリハを開始すること,例えば開胸・開腹手術前に呼吸訓練が依頼されたり,炎症期のリウマチに安静固定を目的に,装具製作が依頼されることはまだ非常に少ない.障害が顕在化した後でさえもリハの開始は遅れがちである.早期にリハを開始することは治療期間を短縮させ,生命を救い,QOLを向上させ,医療費の節減にもつながることは明らかだが,その意義は医療従事者からも社会からも十分に理解されていない.この原因は何よりもあらゆる医療機関でリハ専門医が圧倒的に不足していることにある.リハ医が存在すれば他のすべての診療科から患者は併診依頼され,その効果は広く他の診療科に浸透していく.一般医療機関にリハ医を充足するには,医学部で卒前教育を実施する以外に方法はないのだが,全国でリハ医学教育の体制はまだ整っていない.
この機会に,一般医療機関,大学病院,地域医療圏におけるリハ,そしてリハ医の役割と他職種との連携について,意見を述べさせていただく.
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