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まえがき
カナダ式股義足については,我々はすでに昭和37年にその紹介を行い15),その後症例を重ねて,昭和42年に義足の装着状態について遠隔成績を17),さらに昭和43年には片側骨盤切除,術直後義肢装着法と義足の装着経験を報告している20).この当時の義足はすべてU.C. BerkeleyのFoortおよびRadcliffeによる原法に従って製作したもので,股屈曲制限,膝伸展バソド,単軸膝継手を用いたものであった.当時の装着成績を要約すると次のとおりである.1)義足装着率は,一般にすぐれ,とくに外出時には全例に装着の実用性を認めている.しかしながら,一方,2)自宅での室内生活において義足を除去するケースがほとんどであった.この主原因は,ソケット装着のための窮屈感,または,不快感,さらに夏期の高温多湿下における発汗によるものである.その他3)ソケットおよび各継手による衣服の破損の防止,4)外観の改善,5)歩行速度の上昇と,歩容の改善などが解決すべき残された問題であった.
これらの報告後12年を経過した現在にいたる間に,次のような進歩なり変化が,義足側および切断者側の住む社会環境に起こってきている19).
①ソケット,とくにダイアゴナル,ソケット9),断端外側部を広く開けたソケット,Halbschalenbettung11)など形状,適合手技にみられる変化
②骨格構造化,モジュール化への移行による軽量化とcosmesisの改善
③Valenton,Nancy,Münster,Otto Bockなど多くの股継手の開発
④膝継手における遊脚相,立脚相制御機構の導入18)
⑤日本式生活様式,とくに室内での坐位動作に適応させるためのターンテーブルなどの導入
⑥切断者の社会復帰の不可欠の条件として自動車運転の普及.
このような流れのなかで,我々は,骨格構造義足製作技術習得のために,西独オットボック社でのセミナーに参加するとともに,徐々に膝継手に立脚相,遊脚相コントロール機能を考慮して,処方を行ってきた.
今回このような原則の中で処方してきた義足について,直接訪問とアンケートにより調査を行い,13年前の調査データとの対比の中で我々なりにカナダ式股義足の処方にあたっての問題点を整理してみた.
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