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はじめに
大腿切断において,短断端を切断部位として選択することの可否については,主として義足の処方とも関連してzur Verth以来,文献上賛否両論がみられる.この短断端を切断部位として選択する反対の大半の理由は,大腿義足として十分な適合を得られないとともにカナダ式股義足のソケットの適合には断端が長すぎることによるもので,坐骨結節以下の2.5~5.0cmの短断端の選択は不適であるとしている(Thompson17),Burgess4)).基本的に,短断端の場合にはテコの長さが短いこと,外転屈曲拘縮を伴なうこと,義足のalignment stabilityを考慮せねばならぬこと,などがこの選択を不利とする原因としてあげられている.
一方,最近における義肢の進歩,とくに強化プラスチックソケットの開発と,立脚相安定機能をもつ膝継手の進歩などにより,短断端を見直し,その残余機能をできるだけ生かそうとする傾向がみられるようになっている(Sommelet,Paquin,Fajal16)),Biedermann3)も,5例の短断端の適合成功例を報告し,短断端の利点を強調している.
さて,大腿短断端の選択にあたって,もう一つの問題となるのは,日本の室内における畳上の坐位動作におけるソケットの適合感である.図12は左大腿短断端(5cm)の58歳の例である.吸着義足を装着しているが,図12(b)にしめすごとく,坐位をとることが不可能に近く,また,靴の着脱に支障があるため室内においてはほとんど義足を装着していない.したがって,この例からも明らかなように,大腿短断端を欧米と異なる日常生活動作(以下,ADL)の面からみてみる必要がある.そこで,本稿では,われわれが直接観察し得た大腿短断端のソケットの適合,懸垂およびADLを通じ,大腿短断端の選択につき検討してみた.具体的な症例を紹介しながら,私見をのべてみたい.
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