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はじめに
わが国においてサリドマイド胎芽症が発生したのは,1958年から1962年までの約5年間であり,現在までのその認定障害者数は,306名となっている.このthalidomide embryopathyの全症例のうち,両側無肢症を含む最重症型上肢障害群は10%存在すると報告されている.
西ドイツでは,このサリドマイド児のことを,その薬剤の名前より,コンターガン児(Contergen Kinder)と一般に呼んでいる.西ドイツの発生率は,わが国の約8倍と非常に高く,その対策は1962年より開始され,特定の病院には,1963年にサリドマイド児特別病棟が設けられその治療が開始された.西ドイツでは,障害児の学校における対策として1967年に特別学級が設けられた.義務教育としての学校生活は,1975年より卒業が始まり,1980年までには最終学級が卒業しようとしている.その発育経過は,わが国の場合と時期をほぼ同じくしている.
これらの障害児は,現在成人にいたり,社会人としての対応を配慮したリハビリテーションの必要性が生じてきている.
さて,昭和50年以来,科学技術庁の公的援助のもとに,東京大学工学部精密機械工学科舟久保研究室が主体となり,開発を進めてきたミニコンピューター制御全腕電子義手のフィールドテストに際し,我々は義手コントロールフィードバック系の樹立を目的として,以下の能動義手を工夫し装着訓練を実施した.この能動義手は,両側肩甲骨の運動を利用し,義手肘関節の屈伸,前腕の回旋,手部の開閉をコントロールするものである.この義手を,食事動作,和文電動タイプライター操作,自転車乗り動作などに使用した装着テストの結果,いくつかの利点を発見し,効果的であったことを認めた.ここに工夫せる能動義手を中心に,その実際および装着訓練成果の概要を紹介する.
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