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はじめに
外科的治療法の進歩で,慢性関節リウマチ(RA)のリハビリテーション(リハ)は対象患者の層が拡がり,寝たきり患者に福音をもたらしたが,逆に,不要な手術,手術の失敗,術後管理の不充分さが,種々の問題をおこしている1).
RAは,全身の関節が次々と侵されるので,手術の目的は1ヵ所の美容的な改善より,機能的,特にADLとしての改善が重要である.
現在何でもない関節も将来くずれる可能性があり,総合力としてのある動作が別の関節の破壊のために再び低下し,次から次へと手術をくりかえさなければ収拾がとれなくなることもある.
従って絶対適応はともかく,しないですむものまで手術したり,患者のニード,将来のことを考えないでその場かぎりの改善を目標にして手術すれば後悔することになる.
こうならないためには,まずRAの自然経過を知ること,術後の追跡調査を長期間することでRAがどんなにやっかいな病気であるか認識する必要がある.
RAの自然経過は,長くRAをみている医師でも予想不能で,関節の破壊は個人差,左右差,荷重関節と上肢の差があり,極端な場合は同じ手のPIP,MP関節の侵され方が全く異なる.後から侵されはじめた関簡の破壊が急速に進んで,以前から破壊されていた関節の変化を追い越すこともしばしばあり,同一人の左右肢でも,全くcontrolled studyの対象にならないので,よほどの差が出なければ手術効果などの判定は出来ない.
これはステロイドの効果,副作用についてもいえることで,誤った大量使用はともかく,骨の破壊がRA自身の変化であることを知らず,すべてステロイドに結びつける傾向も問題で,素人をまどわしてステロイドを急に中止させ,身障者をつくることになりかねない.手術しないでどこまでリハが可能か,どの時期にどんな変化のものを手術すればよいか結論は出ないが,私の経験から,自然に治まった例がかなりあること,保存的に半年リハを行う価値は充分あることなどをのべ,術後のリハの重要性などについても触れたい.
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