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はじめに
慢性関節リウマチ(以下RAと略す)は,全身性,多発性かつ慢性の経過をとり,なかには,あらゆる治療にかかわらず,その病理過程の進行を止めえないprogressiveなタイプが約20%存在する.このような患者の関節の炎症性破壊や,それによっておこる四肢の機能不全は患者の社会復帰をひどく妨げる.もちろんリハビリテーションの中の多くの手法,たとえば,補助装具などによって四肢の機能を補助し 残存機能を最大に用いて代償するといった方法も価値あるものと思われるが,四肢や関節に直接的に手術的侵襲を加えて,その機能を回復,再建しようとする手術の価値は,既に確立されているという事ができる.特に近年,各種の人工関節が開発されており,手術の適応範囲が拡大した.RAの外科的療法は大きく2つに分類ができる.1つは,いわゆる早期滑膜切除術(early synovectomy)であり,もう1つは高度な関節破壊,出来あがった変形に対する再建手術である.RAの病期(進行状況)を適切に判断し,手術法の選択を誤まらないようにしなければならない.
早期滑膜切除術に関しては,対象とする関節のどの時期までを「早期」と判断し手術適応とするか,という点に関して定義が不明瞭な面がある.一般的には,「関節症状はあるがX線学的に骨変化を認めない時期」あるいは「症状出現以来,4ヵ月の保存的治療にても軽快しない場合」というふうに,一応は考えられているようである.本術式による治療効果に関しては,その客観的評価が極めて困難ではあるが,約2/3の症例に「優」または「良」の成績が得られたという児玉らの報告がある.
術後早期の除痛効果は,たしかに著しいものがあるが,RAの病勢の進行に対する予防効果については,現在のところはっきりした結論は出ていないようである.
第2の,関節破壊,高度な変形に対する再建手術に対しては,後述するごとき実に様々な術式が考案,施行されている.いずれにせよ術前の慎重な検討,特にその手術目的,そのゴールを明らかにする必要がある.外科的療法は,理学療法,薬物療法などの一連の治療の延長上に存在する事を常に忘れてはならない.
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