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Ⅰ.身障者雇用促進法の改正
そもそもわが国で身体障害者雇用促進法がつくられたのは昭和35年のことで,その契機となったのは1955年のILO99号勧告(身体障害者の職業更生に関する勧告)であったといわれる.すなわち,ILOは第38回総会で,(1)一般労働者の解雇を生まない状態で,一定割合の身体障害者を雇入れること,(2)特定職種を身体障害者に留保すること,(3)重度者にはある種の職種に優先権を与えること,等を勧告したが,これが99号勧告といわれるもので,条約の形ではなく,勧告の形でまとめられたのは,それぞれの国で経済状態が違いすぎ,具体的な施策がそれから強い制約をうけて,統一的な内容を盛り込むことができ難かったからであるといわれる.
しかし,西欧で保護雇用が法律の形で進められたのは,第一次大戦及び第二次大戦を中心とした,傷夷者対策としてであったことを思うと,昭和35年にできたということは決定的な遅れというべく,最も保護法規が要求される時期を逃してしまったことは,その後における対策をいちじるしく不徹底なものとしてしまった.もちろん,日本でも促進法の中心をなすのが,身障者の雇用率の設定であったことはいうまでもなく,一定の比率を定めて雇入れを強制する形をとったことは,外国の場合とほとんど異なる点はない.より具体的にいうと,総理府「労働力調査」による全労働力人口を基礎に,その内で占める身障者の比率を,一般健常者並みの状態にまで高めるのに必要な数字を算出し,官公庁非現業1.5%,現業1.3%,民間事業所1.1%を雇用率と定めたのである.ここまで雇用が進めぱ,当時としては身障者の雇用は大体一般健常者並みとなり,求職中の身障者も一応職場に吸収できるはずであった.
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