Japanese
English
特集 失語症
失語症の評価
Assessment of Aphasia.
笹沼 澄子
1
Sumiko Sasanuma
1
1東京都老人総合研究所言語聴覚研究室
1Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology.
キーワード:
失語症
,
評価・検査
,
診断
Keyword:
失語症
,
評価・検査
,
診断
pp.89-103
発行日 1978年2月10日
Published Date 1978/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103932
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はじめに
失語症患者の言語面の障害に対する臨床手続の第一歩は,適切な評価に始まる.つまり,問題の本質をできるだけ早期に,しかも的確に把握することが治療方針設定の必須条件であると共に,その結果に基づいて行われる治療の成否ないし有効性を左右する最大の要因の1つでもある.
評価の目的は,①まず,失語症患者の示す言語症状を詳細に調べ,②その結果に基づいて失語症の有無,有ると判断された場合はそのタイプと重症度とを明らかにし(鑑別診断),③関連する種々の情報――例えば大脳の損傷部位と範囲,原因疾患,身体状況,行動特徴など――を総合して予後の見通しを立て,④最後に,これらすべての情報を包括的に検討することによって,言語治療計画上の種々の手がかりを得ることである.また,計画された治療方針にしたがって,一定期間言語治療を実施したあとは,再評価(あるいは治療効果の判定)を行ない,必要に応じて治療方針を修正して再び治療活動に移る.このように,失語症の評価活動は,治療活動と密接かつ連続的な相補関係を営みながら,発症からの時間的経過に伴って質的・量的な変容を遂げていく性質のものといえよう.図11)は,この関係を模式的に表わしたものである.
本稿では,こうした時間的要因を考慮し,便宜的に急性期,言語訓練期,慢性期の3期に分けて(図1),それぞれの時期における評価活動の特徴を述べ,最後に失語症評価の問題点と今後の課題について考えてみることにしたい.
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