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はじめに
上肢全体の動作は究極のところ2つの部分からなる.1つは物体を把持し,または物体に接する動作で,これは指の役割である.もう1つはその把持接触を受持つ指を空間の必要な位置に自在に運ぶ位置ぎめの動作である.すなわち上腕および前腕という軸が僥尺関節,肘関節,肩関節で屈曲,伸展,回内,回外,内転,外転,内旋,外旋を行いつつ目的物に近づく.この両者の複合的な組み合せによって上肢動作や上肢を使った日常生活動作は行われる.
この肩関節の機能には大きく分けて2つの役割がある.(1)保持・固定としての作用と(2)運動(動き)としての作用である.
(1)保持・固定としての作用
机上での書字動作,空間でのひも結びなど肩関節は一定の位置で固定されて動きは少なく,指の動きの補助をなすもの,もしくはプッシュアップ,四つ這い,重いものをぶら下げる,押すというように抵抗に抗して,支持固定としての役割を果す.
(2)動きとしての作用
空間での方向づけ動作の他,投げる,釘を打つ,拍子のように上肢全体のダイナミックな複合動作の中で力を要する急激な運動を肩関節に課すものが含まれる.
これら肩関節の役割を疎外する因子としては次のような要因が考えられる.
①拘縮,強直,変形
②欠損
③筋力低下
④筋の痙縮
⑤不随意運動
⑥痛み
⑦知覚障害(とくに運動覚,位置覚などの深部知覚)
⑧姿勢反射,連合反応など
これらの疎外因子を疾患別にみると次のようになる.
(a)慢性関節リウマチ:拘縮,強直,変形,痛み
(b)進行性筋ジストロフィー,分娩麻痺:筋力低下
(c)脳性麻痺:痙縮,不随意運動,失調症状,拘縮,知覚障害,姿勢反射,連合反応
(d)脳卒中:痙縮,拘縮,知覚障害,痛み
(e)頸髄損傷:筋力低下
(f)切断:欠損
(g)ポリオ:筋力低下
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