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はじめに
現在,日本人の死因の順位は厚生省の「人口動態統計」によれば第1位―脳卒中(脳出血・脳硬塞),第2位―ガン(悪性新生物),第3位―心臓病(心筋硬塞など)となっている.ちなみに欧米諸国では,この1位と3位が入れ替り,1位―心臓病,2位―ガン,3位―脳卒中の順である.日本と欧米諸国のこの順位は長い間変っていないが,質的には,日本の場合,大きな変化が現われてきている.それは心臓病による死亡が近年急激に増加していることである.とくに心筋硬塞および狭心症が増加し,20年前に比して3~4倍もの急増ぶりである.年間約10万人の心臓病死亡者のうち,ほぼ半数の45,000人が心筋硬塞および瞬間死で死亡している.
このような実態に鑑み,近年心疾患による死亡がわが国においても種々の問題になってきている.とくに冠状動脈硬化性心疾患は自然死のなかでも最も頻度が高く,この疾患は生産性の高い壮年者をしばしば一瞬のうちに死においやるため,社会的損失は計り知れないものがある.わが国でも生活様式および食生活の変化にともない,Coronary risk factorを有する中・高年者の増加が著しく,やがて罹患率および死亡率は欧米なみに達するのではないかと思われる.一方,米国における冠状動脈硬化性心疾患による年間の死亡数は65万人にも達し,そのために失なわれた賃金,生産性,費やされた医療費などを換算すると,年間の損失額はおよそ300億ドルにも達するといわれている1).
以上のような心臓死による損失を考えるとき,coronary risk factorの改善が直ちに冠状動脈性心疾患のprimary preventionの一つの対策となり,同時にsecondary preventionが重要な問題ともなり,これはリハビリテーションの一部ともなる.最近,心疾患患者のリハビリテーションあるいは日常生活活動の指導・管理などの面から患者の現状の把握および運動あるいは作業中の心機能の変化を検討し,心疾患の運動処方による効果を問題にした種々の研究がなされてきている.
本稿では心疾患およびエネルギー代謝の一般的概念,心疾患患者の機能および運動許容量の評価,各種の活動によるエネルギー消費量,運動処方,心疾患患者のリハビリテーション中のエネルギー代謝の変化などについてのべてみる.
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