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はじめに
現在,労働者の高齢化や生活習慣病罹患率の増加がみられている1).就労している心疾患患者(就労心疾患患者)も年々増加傾向にあることから2),心臓リハビリテーションにおいても重要な課題となっている.しかし,就労心疾患患者は退院後に特定の身体機能障害が出現することは少なく,外見上は健康に見えることが多いため,事業所が就労心疾患患者の身体・精神心理機能の低下を想像することは難しく,事業所との条件調整が困難なケースも少なくない.また,就労後のメンタルヘルスについて,心疾患発症後の復職は心疾患発症によって生じる不安の増強だけでなく,職場の要求と患者の能力のアンバランスから抑うつ状態などのストレス反応が出現すると報告されている3).就労心疾患患者における疾病や運動耐容能の変化に伴う精神心理的変化は,復職の可否や復職の時期,さらには復職後の就労継続,労働生産性に大きく影響する可能性がある.
近年,疾病や障害を抱えた労働者に対する両立支援の取り組みが推進されている.診療報酬上においても,両立支援の推進に向けて2018年度の診療報酬改定で「療養・就労両立支援指導料」が新設され,2022年度の改定で算定対象に心疾患も追加された.治療と仕事の両立支援は,疾病の増悪,再発や労働災害が生じないよう,就業場所や作業の変更,労働時間の短縮など,適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行うことが前提となる.これらの適切なリスク評価や運動耐容能の改善が期待できる心疾患の治療としての心臓リハビリテーションと仕事の両立支援体制づくりが望まれる.今後も世代や業種を問わず治療と仕事の両立を希望する労働者が増えることが予測され,医療機関と事業所のそれぞれの取組みとともに,医療機関と事業所の連携が重要である.本稿では,心疾患患者の復職・両立支援における現状と課題,両立支援にリハビリテーション専門職種が関与すべき理由について概説する.
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