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はじめに
リハビリテーションの目的は広く解釈すれば,その第1は出来る限り身体的障害を除去することである.その第2は,やや狭い意味ではあるが,総てが除去されない場合に,残った障害を訓練することにより,短期間に最大限に機能をたかめ,自分自身の力と工夫も加えて,生活し職場に復帰することの出来る自信と能力と技術を体得せしめるように,医学的,社会的に合理性ある指導をすることにある.
心臓外科領域においても,新生児期,乳児期に,高度に複雑心奇型,また重症例に行なわれる救命的な一部の手術は別として,大部分の手術は第1の目的に沿ったものである.すなわち形態的な異常を除くか,機能的に正常に近い循環動態に修復することを目指すわけで,心臓外科での毎日の手術手技そのものが外科治療の適応のある心疾患のリハビリテーションの第一歩であるとともに,最も主要な部分であると結論しても過言ではない.
以上のような基本的ではあるが,手技上の要因を多く含む第1の問題はひとまず別として,心臓外科領域でのリハビリテーションの問題を考える場合,常識的には前述の目的の第2点が中心となるであろう.すなわち,手術の目的は総て達成され,術直後の心肺危機の状態もすでに克服された回復期に向いつつある患者が対象となる.その時期の患者は心臓手術を受けたことにより,心身ともに不安定な状態にある.適切な指導と訓練により最も効果的に心予備力を高め,精神的にも社会復帰への自信を持たせるような,合理的なプログラムを作製することが大切である.
本文では,三井記念病院で,この5年間に開心術を受けた40歳以上の患者の社会復帰までの状況を調査し,その実態と社会復帰を阻害した2,3の因子を知り得たので,今後の心臓手術後患者のリハビリテーションのあり方についての考察と併せて報告したい.
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