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はじめに
普段,いわゆる健康に生活してきた人が,ある日突然,心臓発作で倒れた場合,最初に患者自身が考えることは生命に対する不安である.急性期を過ぎてからは,退院後どのように生活すればいいか,もとの仕事に戻ることが可能なのか,などの心配が出てくる.
心疾患のリハビリテーションは特に心筋梗塞のリハビリテーションの流れの中で,退院し,社会復帰し,ある程度の日常労作が可能となり,その後復職させることが,再発作予防など予後の改善とともに一つの大きな目的でもある.
しかし,心筋梗塞慢性期の病態は症例により様々である.幸いに退院できた症例でも,心機能の低下が著しく,かろうじて軽度の日常労作が可能な例から,心機能は十分に回復して,再発作などの危険もなく,健康な人と同じように生活できる例まで広い範囲にわたっている.復職をあせるあまり,心機能が悪い例に無理して早期に復職させ,再発作,梗塞後狭心症,心不全,不整脈などの合併症が出現して再入院する場合もある.また逆に安全をとるあまり,心機能がよく,なんら危険性のない例を長期間復職させないでいる場合もある.
しかし,復職については病態の重症度のみから決められるものではない.年齢,性別,社会的地位,経済面,家族構成,精神面,病気に対する理解度,職業の種類など様々な因子が複雑に絡み合っている.
医師は急性期の病態,入院中のリハビリテーションの進行度,心カテーテル所見,運動負荷試験の成績,退院後のリハビリテーションの進行度などを参考として職場復帰の時期を決めるべきである.
我々は当院第3内科に急性心筋梗塞で入院した患者に対して,退院後アンケート調査を行っているので,本稿においてはこの成績を中心に述べる.
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