巻頭言
随想“洗い直す”
野島 元雄
1
1愛媛大学医学部整形外科
pp.771-772
発行日 1976年10月10日
Published Date 1976/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103637
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「世の中には誰かがなさねばならない小さくて大きな事がある」「また,この事をしなければならないのは控え目な,心の通った力もちである人々である」とは,私が旧制六高に在学中に学んだリケルの散文の中にでてくる一節である.私は,この言葉が好きだ.「世の中」を「医学の世界」とでもおきかえると「リハビリテーション医学の真髄」を定義しているとも考えられる.控え目な,しかし,心に力のこもった人達,単数でなく複数で支えられることは,すなわち,リハチームを意味し,“この人達”は心が通ったチームであり,小さな積み重ねが,大事を成すことも容易に首肯することができる.
残念ながら私自身,整形外科医としての教育を受け,途中から「小さくて大きな事」を成就すべく,リハビリテーション医学に足をふみ入れたが,所詮,2足の草鞋,一途専心する「力もち」にはなることはできず,若くして,この道一途と頑張っておられる「リハビリテーション医」諸氏を羨しく思い,かつ敬服いたしているのが偽らざる心境である.反面,私をして「リハ医学」に関心をかり立てた要因には,冒頭の一節がいつも心に焼きついていたからではなかろうかと述懐し,また同時に,リハビリテーションチームの諸兄・諸姉に改めて,“心の通った人達”,しかも腹のすわった人々となるべく不断の努力を重ねていただきたいと祈念する次第である.
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