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はじめに
姿勢反射postural reflexは,筋が伸ばされると自動的に縮むという反応であり,姿勢の保持などに役立っている.筋の伸びに対する反応であるので,伸張反射stretch reflexとも呼ばれた(Sherrington,1924).この反射が成立するため,まず筋の伸びを感覚することが必要で,その受容器は筋中に含まれている筋紡錘muscle spindleである.それからでる求心性神経は脊髄に入り,1つは運動ニューロンに行き伸張反射弓を構成し,求心性神経のもう1つの枝はそのまま脊髄を昇り,大脳や小脳に及び筋の伸び具合を伝えている.伸張反射活動は直立姿勢においては抗重力筋の伸びによって発生する.抗重力筋としてたとえば膝関節での伸筋がそうであるので,除脳ネコの伸筋において最初に伸張反射の機構が研究された(LiddellとSllerrington,1924).
図1のTは筋を6.5mm伸ばす経過を示す.そのとき発生した筋の張力はMとして示されている.伸筋を支配する神経を切断すると,同様の伸展に対してもPに示すように張力の発生が少なくなる.MからPを差引いた張力部分が,伸張反射の活動によって発生した張力である.
Tにみるように筋は1秒間かけて伸ばされ,その後一定の長さを保つ.伸ばされつつあるときを相動性伸展phasic stretch,後者を持続性伸展tonic stretchという.相動性伸展に対しては張力の発生が早くしかも大きい.伸張反射というものは伸びの速度に敏感に強力に反応している.図1で示すiとi'の間で拮抗筋支配の神経が刺激されるとMが減少し,Pの値となる.伸張反射活動が抑制されたためである.これは相反性の反射性抑制reflex inhibitionである.
直立姿勢時における伸筋は,伸ばされると直ちに収縮し,伸びに抵抗する.伸びが早いとそれだけ強く早く反応し,反射による自動調節の発現が遅れないようになっている.伸張反射は伸筋のみならず屈筋にもある.屈筋の活動は歩行などの関節運動による伸び縮みからその伸張反射が働く.歩行の動きは相動性伸展に相当するので,屈筋では相動性伸張反射が優勢であるということになる.伸筋では歩行以外に姿勢の保持にも強く働くので,相動性伸張反射のみならず,持続性伸張反射も強力に働いている.伸張反射は相動性と持続性を分けて理解していくことが必要である.
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