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講座
運動の制御(1)―小脳の果たす随意運動制御
Voluntary Movement Controlled by Cerebellum.
本間 三郎
1
Saburo Homma
1
1干葉大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Scool of Medicine, Chiba University.
キーワード:
随意運動
,
閉ループ
,
開ループ
,
ガンマ運動神経
,
アルファ運動神経
Keyword:
随意運動
,
閉ループ
,
開ループ
,
ガンマ運動神経
,
アルファ運動神経
pp.311-316
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103531
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はじめに
小脳は各種運動を協調する中枢神経である.上位中枢が関与する運動には,大脳皮質から錐体路を経由して発現する随意運動と,大脳皮質や大脳基底核から錐体外路を経て姿勢保持に関係する緊張性運動がある.小脳はそれら両者の運動を互いに協調し,また全身の運動がそれぞれ合理的に行えるようこれを調節している(佐々木,1975).
小脳が障害されれば,協同運動不能asynergia,推尺異常dysmetria,筋緊張低下hypotoniaなどがみられるようになる.実験的に小脳を摘出すると,いわゆるアルファ型固縮α-rigidityが現れ,運動が不能となる.
小脳から脊髄の運動ニューロンに作用する経路として,小脳皮質の中間部pars intermediaから赤核を経由してα-運動ニューロンを抑制する経路と,小脳皮質の外側部pars lateralisから網様体を経てα-運動ニューロンに及びこれを抑制する経路がある.両者ともα運動ニューロンを抑制するが,その作用機序は異なっている.このことについては後述する.
運動が制御されるに2つの方法がある.1つは,運動を発現する筋の収縮の状態が遂一フィードバックされ,それに基づいて筋収縮を調整して行く.このような調節にあずかる神経回路は閉されているから閉ループと呼んでいる,閉ループはそれだけの神経回路の活動で運動は調節されている.一方,筋収縮の状態がフィードバックされることなく,それは開ループであるが,運動を行う神経回路の活動を他から調整する.それが小脳の1つの役目で,いうなれば開ループの制御にあずかっている(伊藤,1975).
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