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はじめに
筋が引き伸ばされると自動的に収縮して元の長さに戻ろうとする.そういった機構が運動制御の原則であるが,生体では伸張反射stretch reflexにより行われている.筋の伸びを感覚するために筋中には筋紡錘muscle spndleと呼ばれる受容器が含まれている.下肢の筋などでは数十個の筋紡錘が含まれている.筋紡錘の長さは筋の種類や動物によって異なるが,下肢では1cm以上に及ぶものもある.しかし,長い筋ではこれらの筋紡錘が直列に2個あるいは3個つながっていて,筋の全長にわたる長さ変化をまんべんなく受容している.タンデム筋紡錘tandem spindleと呼ばれている(後述).
筋紡錘は細く長く筋線維と平列にあり(図1),筋の伸びを感じとる.もし筋が収縮し短くなると平列にある筋紡錘はたるむkink.この状態では筋紡錘は働き得ない,したがって,収縮中に筋に外力が加わり,筋が伸ばされても筋紡錘が伸びを感覚するまで伸ばされるのは容易でない.筋収縮中では伸張反射が成立せず自動制御がなされないことになる.このような不都合な仕組をなくし筋が収縮中でも筋紡錘が働くには,上述の“たるみ”がなくなればよい.筋の収縮と共に筋紡錘の受容器部分を同時に引き伸ばす機構が別に働けばよい.筋紡錘は数本の筋線維から成り,中央部―そこを赤道部といっているがそこに長さを感覚する受容器がある.この筋線維を錘内筋線維intrafusal muscle fiberと呼ぶ.そのようにいう場合には,普通の筋線維を錘外筋線維extrafusal muscle fiberといって区別している.それぞれの筋線維はγとα運動神経により支配されている(図2参照).筋はα運動神経からのインパルスにより収縮するが,それと共にγ運動神経も働き,錘内筋線維を収縮せしめておれば,赤道部にある受容器は引き伸ばされ“たるみ”なく緊張状態になっていることができる.そのとき外力が加われば直ちにそれを感覚する.伸張反射が成立して筋が収縮し加わった外力に抗するようになる.本論ではこのγ運動神経と筋紡錘の機構について述べる.
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