巻頭言
リハビリテーションにおける人間の思想と科学の出逢いをもとめて
小島 蓉子
1
1日本女子大学文学部
pp.353-354
発行日 1975年5月10日
Published Date 1975/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103326
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ナホトカからソ連船にて2昼夜を過し,3日目の朝,かすかな島かげを見た.それはちょうど青天に絵筆でひとはけ,黒の一文字を引いたような媒煙の下,灰色のコークスの一塊のように浮ぶ日本本土の一角であった.
過ぎる十数年前,初めての北米留学の途上,太平洋沖から雲一つない紺碧の空と海の間のみどりの浮島にみえたカナダ西海岸に接した時のあの清新さとはあまりにも対照的な島のイメージ,それが今回,学業を終えて2年ぶりに帰るわが母国への久々の対面の圧感であった.あの公害雲のもと,世界でもまれな過密人口をかかえ,人間が幾重にも重なり合うように喘ぎ走る日本,その内部に噴出する社会的問題はいかばかりかと,目前にせまってくる母国に対面しつつ,1億人口分の1の小さな存在ながら,日本の問題の重さを,「バイカル」のデッキに思った次第であった.
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