巻頭言
リハビリテーション医学の教育
天児 民和
1,2
1九大
2九州労災病院
pp.885-886
発行日 1973年9月10日
Published Date 1973/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103005
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本年のリハビリテーション医学会総会においても教育が取りあげられ,それぞれの演者が熱心に研究の成果を発表していた.私はそれをフロアーでじっと聞いていたが,これだけ熱心に論議せられているのにもかかわらず大学内においては案外に無関心であるのは何故だろうか.現在の医学は治療医学に参加する人が圧倒的に多い.もちろん医学の中で治療医学は重要な部分である.人類の歴史の中にも治療医学は欠くことのできないものであった.だからこの方面に医学の研究者が集中するのは当然である.
しかしこのような治療医学の急速な進歩は人体に重篤な機能障害を残すものをだんだんと増加してきた.例えば重篤な先天性脳性麻痺は戦前においては長く生存するものは少なかった.しかし今日では小児期に死亡するものが少なく,肢体不自由児施設で重度の障害児を収容している所が多いが,ほとんど死亡者が出ていない.重度の障害を持ったまま子供たちはだんだん成人している.脊髄損傷も第一次世界大戦には長期生存するものはほとんど無かった.しかし第二次世界大戦後においては脊髄損傷患者も長期生存することになった.しかしながら抗生物質が十分に普及しなかった初期では長期生存をするものの大半は馬尾神経損傷であった.しかし今日では最も予後の悪いとされている頸髄損傷も長期生存する例が多い.それは脊髄損傷に対する看護技術の向上の功績である.頭部外傷においてはもっと深刻な例が多い.いわゆる植物人間という重度のものから,そこまで達しないが重篤な中枢神経損傷を有する人も多い.
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