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はじめに
最近の科学技術の進歩は目覚ましく,各種専門職はその進歩に追い付くべく自ら努力することを余儀なくされる.医学の分野においてもその例外ではなく,知識および技術の習得は専門職である以上,生涯にわたって続けられる必要性がある.卒前教育の場では各大学の努力および医師国家試験の出題による影響から,新しい知識,技術の習得は制度的に一定以上のレベルに上げ,保つことが可能である.また,卒後研修カリキュラムを通じて,2年間の研修期間中に新たな知識,技術の供給が行われる.すなわち,卒前および卒後の研修医期間は制度的に知識および技術の習得が義務付けられる.
しかし,その後は自らの責任において行われ,主として学会や刊行物を通じて新しい知識や技術の獲得,不足部分のオーバーホールがなされるだけで何の制約もなく医師免許は更新されている.それに対し,医師免許あるいは専門医資格取得後に何らかの自己学習を義務付ける制度すなわち生涯医学教育制度(Continuing Medical Education;CME)の必要性については以前から叫ばれていた.生涯教育は最近まで日本ではあまり関心をもたれることがなかったが,米国での専門医制度の確立と医師および専門医資格の更新の条件としての生涯教育の制度化により,わが国においても多くの医学会および医師会にて導入が行われている.
生涯教育制度導入前の米国の状態は米国医学会(American Medical Association;AMA)や州の医学会の学術集会の出席は悪く,教育講演の内容も必ずしも充実したものではなかったといわれている.導入後の学会出席者の増加や講演の質の向上などの,供給側,被供給側の変化は生涯教育の効果として評価されている.米国で最初(1950年代)に生涯教育の受講を義務付けた学会はAmerican Academy of General Practitioners(後のAmerican Academy of Family Physician)で,以後さまざまな州で州立医学会の会員資格継続の条件や医師免許更新の条件として採用されてきている.また,各医学会でも専門医資格更新の条件として生涯教育受講を義務付けている.
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