Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
昭和45年5月21日,心身障害者対策基本法が公布された.同法の提案理由によれば,「心身障害者に対しての社会連帯,人間尊重の理念から,そのハンディキャップをできるだけ軽減し,個人の尊厳にふさわしい生活を保障するために,従来の行政のひずみを改善し,一貫した体系,有機的な連けいのもとに,きめこまかい施策が要請されている…….国および地方公共団体は,発生予防と適切な心身障害者対策を講じなければならない……」とある.
周知のように心身障害者のリハビリテーションは,医学,教育,心理,職業など各領域からの指導と社会的な援助がなければその目的の達成はあり得ない.
リハビリテーションとは,障害があるために社会生活が妨げられている個人を,身体的,精神的,経済的な能力を最大限に回復させ,社会的な人間として役立つよう,あらゆる手段を用いて行なう社会的援助と理解するならば,幅広い対策が必要なことは当然である.しかし現代のように複雑な社会機構の中では,“身障者福祉”の実行面では,まだまだ残されている問題も多い.
たとえば,問題によっては適用される法律も多様で,また法律によっては取り扱う機関も違う場合も多く,さらに専門職化の傾向のより強まる中で,援護を受ける身障者(家族)側からみると,あちらこちらと振り回され,その結果は問題が解決されない場合も多く,現状では必ずしも社会的ニードに対応できているとはいえない.
このような時に,施策の面で改善の方向を示したものが基本法であると考えられる.しかし同法が基本法という性格から考えて,現在の心身障害者の問題のすべてを解決するとは期待できないかもしれないが,彼らのかかえている問題は,“障害(児)者殺し”にもみられるように,その問題は深刻であり,今後は同法でも明記されている精神と,その施策が一人一人の心身障害(児)者や家族の共有できる日がくることを期待したい.
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.