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リハビリテーションにおける痙縮
脳卒中をはじめとした中枢神経疾患後遺症の麻痺肢の機能回復に対するリハビリテーションのアプローチには,さまざまな手法により麻痺自体の回復を促通させるアプローチと,中枢神経疾患の後遺症として麻痺肢に発生する異常な筋緊張を抑制するアプローチなどが挙げられる.この筋緊張異常の代表的なものとして痙縮が挙げられる.痙縮は古典的な上位運動ニューロン徴候の主要な陽性徴候として知られ,「筋伸張反射と筋トーヌスの異常な亢進状態であり,筋伸張速度に依存した受動運動に対する筋抵抗の増大」と定義される1).この定義では痙縮は筋緊張の亢進(hypertonia)および反射の亢進(hyperreflexia)の2つの概念が混ざったものとされるが,実際の臨床の場面で問題となることの多くは動作時の筋緊張の亢進である.これは厳密には先に述べた定義には合致しない.というのも脳血管障害をはじめとした中枢神経疾患後遺症として生じる筋緊張の異常には痙縮以外にも病的な共同運動や拮抗筋共同運動などさまざまなものがあり2),それらは互いに影響しあい,明確な区別を行うことは困難であるのが実情である.そのため,本稿では脳卒中患者をはじめとした中枢神経疾患後遺症として生じる筋緊張の異常な亢進を広い意味で痙縮と括ったうえで話を進めることとする.
一部の患者では痙縮を利用して,下肢や体幹の支持性を上げて歩行をはじめとする動作の一助とすることもあるが,多くの場合痙縮の存在は日常生活動作(activities of daily living;ADL)の阻害因子となり,患者の生活の質(quality of life;QOL)を大きく下げる要因となる.臨床場面で痙縮が引き起こす問題点を以下に述べる3).
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