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特集 ボツリヌス治療とリハビリテーション
脳血管疾患(上肢)
The botulinum toxin therapy in treating upper limb spasticity with cerebrovascular disease.
川手 信行
1
Nobuyuki Kawate
1
1昭和大学保健医療学部リハビリテーション医学
1Department of Rehabilitation Medicine, Showa University of School of Nursing & Rehabilitation
キーワード:
ボツリヌス治療
,
脳血管障害
,
片麻痺
,
痙縮
Keyword:
ボツリヌス治療
,
脳血管障害
,
片麻痺
,
痙縮
pp.839-843
発行日 2012年6月10日
Published Date 2012/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102550
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はじめに
脳血管疾患による麻痺は,上位運動ニューロン障害の兆候のひとつである筋痙縮を伴うことが多い.痙縮は,「腱反射亢進を伴った伸張反射の速度依存性の増加」1)とされており,筋緊張の増加,筋クローヌスの出現,折りたたみナイフ現象が生じ,これらが長期間継続することで,片麻痺の共同運動から分離運動への促通が阻害されるとともに関節周囲組織の短縮が生じ関節拘縮が引き起こされる.この痙縮を抑制し,分離運動を引き出すことがリハビリテーション医療では重要であり,痙縮に対する治療的アプローチは表12)に示すように,経口抗痙縮薬,温熱療法や筋伸張法などを含めた理学療法,神経ブロック療法,末梢神経縮小術や選択的後根切断術などの脳神経外科学的治療,腱延長術や腱移行術などの整形外科学的治療3)など,さまざまなアプローチが行われてきた.
上肢痙縮に対するボツリヌス治療は,海外では1900年代頃から散発的に行われ,1996年Simpsonら4)によって初めて無作為比較臨床試験が行われて以降,複数の臨床試験5-7)が行われ,その有用性や安全性についての検証がなされている.日本においても2007年5月から約1年間かけて,多施設の協力のもと無作為比較試験が行われ,有効性と安全性が報告された8,9).さらに,2010年10月に「成人上肢・下肢痙縮」に対して適応が拡大され,痙縮に対する治療的アプローチ法の一つに加わった.本稿では,脳血管障害による片麻痺の痙縮に対するボツリヌス療法での具体的な投与方法や手技,適応と禁忌,副作用に加えて,その効果について自験例を含めて言及したい.
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