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講座連載の冒頭にあたって
欧州と比較して立ち遅れが目立つ日本の障害分野であるが,その一つに労働分野の遅れが挙げられる.それは関連する国際規範に照らせば一目瞭然である.古くは,1955年の国際労働機関(ILO)による「身体障害者の職業更生に関する勧告(第99号勧告)」や1975年の障害者権利宣言(第7項を中心に)に遡る.決定的にその立ち遅れを思い知らされたのが1983年の「障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約(第159号)」,ならびに同タイトルの第168号勧告であった.むろん,今般の障害者権利条約は言うに及ばずである(第27条を中心に).これらの国際規範のなかには採択されて半世紀以上になるものもあるが,今なお本質面での溝は埋まらないままである.国際比較だけではなく,日本国内の他の分野との比較においても遅滞は明白である.十分とは言えない教育や医療,昨今進展の著しい工学などと比べて,遥か後方に置かれていると言ってよかろう.
言うまでもなく,一人の障害者の社会参加を実質化していくためにはさまざまな分野が重層的に確保されなければならない.換言すれば,特定の分野がいかに充実していようが,一つでも重要分野が欠落すれば,結果として社会参加は果たせず充実していたはずの分野の価値は半減もしくは無と化してしまうのである.真に一人の障害者の社会参加や地域生活を果たそうとすれば,つまり,リハビリテーションを総合的に追求しようとすれば,自らの専門分野の不断の研磨は言うまでもなく,遅滞している関連分野の引き上げへ尽力することは欠かせない視点と言えよう.その点で,労働分野は遅滞している分野の代表格の一つであり,リハビリテーションの関係者全体としても関心を強めて欲しい.
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