特集 がん対策の強化
「がん対策推進基本計画」の重点課題への対応
がん患者の就労支援―わが国の現状と今後の課題
高橋 都
1
1国立がん研究センターがん対策情報センター がんサバイバーシップ支援研究部
pp.987-991
発行日 2013年12月15日
Published Date 2013/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102906
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
「がんは日本人の死因の第1位である」,「日本人の2人に1人が一生のどこかでがんになり,3人に1人ががんで亡くなる」.これらは一般市民向けのがん講座などで頻繁に聞かれる表現である.このように,がんという病気がわれわれにとって極めて身近な病気であることが強調され,その予防や早期発見に向けた公衆衛生活動が広く展開されてきた.しかし,実際にがんと診断された後の人生を充実させるための考察や支援実践は,予防活動と比較するとこれまではるかに手薄であったといわざるを得ない.がんの診断・治療後に社会生活を送るプロセス(がんサバイバーシップ)に関する研究は国際的にも注目され,中でもがん患者や家族の就労支援は重要トピックとされている1).就労は収入の源であるだけでなく,多くの人にとって生きがいや自己のアイデンティティという意味も持つ2).また,患者本人だけでなく,看病する家族の就労にも多大な影響がある3).
本稿では,働くがん患者を取り巻くわが国の現状と,支援の方向性や今後の課題について論じる.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.