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はじめに
呼吸器疾患のリハビリテーションは,結核後遺症などの感染症分野から慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)や間質性肺炎(interstitial pneumonitis;IP)など非感染症分野へと主たる対象が変化してきた.2001年のWHOの調査1)では,COPDは高所得国における死因の第5位となっており,2020年には世界の死亡原因の第3位にまで上昇すると推定されている2).
COPDは,世界中でその罹患率・死亡率が増加し,2001年にNHLBI/WHOによって,国際間で統一したCOPDの予防・診断・治療のためのガイドラインGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)が発表された.そのなかで中等症以上のCOPDの推奨される治療法の一つにリハビリテーションが取り挙げられた.
わが国においても2001年,日本呼吸管理学会(現,日本呼吸ケア・リハビリテーション学会),日本呼吸器学会から「呼吸リハビリテーションステートメント」が報告され3),2003年,日本呼吸管理学会,日本呼吸器学会および日本理学療法士協会から「呼吸リハビリテーションマニュアル―運動療法」4),2007年には上記3学会に日本リハビリテーション医学会が加わり「呼吸リハビリテーションマニュアル―患者教育の考え方とその実践」など次々と発刊された.
欧米においても,2006年にGOLD up date,2007年にACCP/AACVPR5),ACP6)など次々と新しい知見に基づく,COPDガイドラインや呼吸リハビリテーションのガイドラインが報告された.特に2007年に報告された,ACCP/AACVPRの呼吸リハビリテーションガイドラインでは,運動療法の具体的内容の科学的根拠と推奨レベルを示している.また,2009年の英国の胸部学会と公認呼吸器ケア理学療法士協会,臨床的な呼吸器に関係する団体の公認理学療法学会間で構成されたthe British Thoracic Society Physiotherapy Guideline Development Groupから「Guidelines for the physiotherapy management of the adult,medical,spontaneously breathing patient」が報告され,COPDのみでなく,IP,喘息,膿胞性肺線維症,気管支拡張症,神経筋疾患の呼吸訓練や気道クリーニングなど,いわゆるコンディショニングの科学的根拠や推奨レベルを示している7).
わが国においても2010年,日本理学療法士協会が,「慢性閉塞性肺疾患(COPD)理学療法診療ガイドライン0版」を公開し,2011年には第1版を出版する計画である.このように呼吸リハビリテーションは国内外を問わず,今やCOPDを中心とした呼吸器分野の必要不可欠な治療法となり,呼吸器疾患にかかわるすべての医療職者の必要な知識と技術となっており,呼吸リハビリテーションを開始する準備は整っている.
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