Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「アンダンテ~稲の旋律~」―引きこもりからの脱却を支えた自然・労働・仲間
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.597
発行日 2010年6月10日
Published Date 2010/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101798
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全国引きこもりKHJ親の会家族会連合会による2008年度の会員調査では,引きこもりの平均年齢は30.12歳となっており,高齢化が進んでいる.東京都青少年・治安対策本部の2007年実施の調査によると,都内の15歳~34歳の引きこもり出現率は0.72%で,2万5千人に上る.さらに,高い引きこもり感情を有している若者は16万人に上る.2008年の中学校における不登校生徒(全国)も35人に1人という割合であり,引きこもりを生み出す裾野は依然として広い.そろそろ問題解決に供する手がかりが欲しいところだが,「アンダンテ~稲の旋律~」(監督/金田敬)は,その一つになりそうだ.
藪崎千華(新妻聖子)は,ズバリ先掲平均年齢と同年齢の引きこもり女性.本作は,引きこもりの遠因を両親に求めている.エリート主義的で共感性の低い教員の父親.実現できなかったピアニストへの夢をわが子に押しつける母親.親の喜ぶ顔を見たいがために懸命にがんばる千華.大学も親の言われたとおり教育学部に入るのだが,そこでポッキリ心が折れてしまうのだ.
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