書評
糸満盛憲(編)「運動器外傷治療学」
松下 隆
1
1帝京大・整形外科学
pp.1054
発行日 2009年11月10日
Published Date 2009/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101638
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整形外科医が身につけておくべき外傷治療の知識を網羅
本書の帯には,「整形外科医である以上,『外傷治療』は外せない」と書いてある.ところが,編者の糸満教授が序文に書いておられるように,「運動器外傷の教育が実際の症例をもとに包括的・系統的になされている大学はきわめて少ない」.本書を執筆された北里大学整形外科学教室はその数少ない「外傷に取り組んでいる教室」であり,主任教授である糸満先生は日本骨折治療学会の初代理事長を務められ,日本の骨折治療の進歩に尽力された先生である.先生が総論の冒頭に書いておられる「骨折治療の歴史と治療の基本的考え方」は骨折治療の進歩がわかりやすく整理されており,現在行われている治療のコンセプトを理解したり,骨折治療をどのように進歩させていけばよいかを考えるのにとても役立つ内容となっている.執筆陣は北里大学整形外科学教室出身の15名であり,この人数でこれほどの内容の書籍を執筆するのは大変な作業であったことと思う.その能力と努力とに敬意を表したい.
さて,多くの先進国では外傷患者を集め,集中的に治療する外傷センターが整備されている.そのような国では症例も専門医も集約されているので,外傷の治療は外傷専門医のみが行うシステムが確立している.そして外傷センターではきわめて効率よく短期間に外傷治療の教育を行うことができる.しかし,外傷センターが整備されていない日本では,外傷患者が多くの病院に分散し,ほぼすべての整形外科医が外傷の治療にあたらざるを得ない.その結果,骨折治療の教育をすべての整形外科医に対して行わなければならないのが現状である.
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