書評
糸満盛憲,占部 憲,高平尚伸 訳「MIS人工関節置換術」
黒坂 昌弘
1
1神戸大学・整形外科学
pp.1098
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101071
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MISの光と影を理論的かつ客観的に記載
欧米の第一線で活躍する整形外科医によって執筆された『Minimally Invasive Total Joint Arthroplasty』が,北里大学の糸満盛憲教授らによって翻訳され,『MIS人工関節置換術』として出版された.
人工関節置換術は,数ある整形外科手術のなかでも最も確実性の高い,信頼のおける手術であることは,疑いの余地がない.人工関節置換術に関しては,デザインや材質の改良に始まり,種々の新しい試みが導入されている.最小侵襲手術と訳されるMinimally Invasive Surgery(MIS)は,数ある新しい試みのなかで,近年最も注目されている概念である.少ない手術侵襲で患者の術後疼痛を和らげ,日常生活への復帰を早めるという概念は非常に魅力的であり,多くの整形外科医に広まりつつある.この意味では,本書は非常に時を得た出版であり,読者に理解しやすい図や写真の配置と,筆者の意図を組み込んだ,訳者の的確かつ明快な翻訳により,読者は多くのことを学び取ることができると確信する.従来の人工関節置換術の成績は安定しており,手術侵襲を小さくするだけでは,本質的なメリットは多くないとも考えられる.しかし,関節鏡手術が導入されたときに,置き去りにされた関節外科医が存在したように,最新の医療が導入されるときに,客観的にその技術を学び,導入していくことは外科医として重要な姿勢である.
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