Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
サルトルの『実存主義はヒューマニズムである』―人生の意味の解読
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.682
発行日 2009年7月10日
Published Date 2009/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101556
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1945年,サルトルが40歳の時に発表した『実存主義はヒューマニズムである』(伊吹武彦訳,人文書院)は,「実存は本質に先立つ」という言葉で有名な講演録であるが,そのなかでサルトルは,イエズス会のある人物の人生に処する態度を紹介している.
この人物は,過去にかなり苦しいいくつかの蹉跌を経験していた.子供のころには貧しい彼を残して父親が死に,ある宗教施設の給費生になった後にはお情けで入れてもらったという気持ちを絶えず感じさせられた.彼は,子供たちが好む表彰状も貰いそこねたし,18歳のころは恋愛にも失敗した.さらに22歳の時には軍事教練の試験にも落ちたため,それが絶望に輪をかけて,彼はすべてに失敗したと考えるようになったのである.
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