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はじめに
表1に前回扱った重回帰に加えて,今回解説するロジスティック回帰(logistic regression)とCox回帰(Cox regression)を対比し,特徴を示した.結果変数(あるいは目的変数)が3者で異なり,それに伴ってモデル化の方法も異なっている.Cox回帰はロジスティック回帰よりも追跡途中の情報を加味できるため,より情報量の多い手法と言える.しかし,イベントの有無だけでなく,いつイベントが生じたかという時間情報がないと解析できない.
まず,結果変数が2値データの場合を取り上げる.例えば,6か月後のmodified Rankin Scale(mRS)が0になるか否かは2値データである.1年以内の死亡の有無も2値データになる.このとき,単変量での解析法としてはχ2検定が知られるが,多変量解析になるとロジスティック回帰が一般的によく使われる.回帰式の右辺が多数個の変数となるため,多重ロジスティック回帰(multiple logistic regression)と呼ぶこともある.
ロジスティック回帰は,1962年にJerome Cornfieldが提唱したものである.観察期間がみな同じという前提で適用される.例えば,1年死亡率の解析では,全員が1年間観察されたことがロジスティック回帰の前提になっている.したがって,半年しか観察されていない患者が混じっていた場合,その患者は仮に半年時に生存したとしても,1年以内には死亡に変わるかもしれない.このような場合,解析結果にバイアスを及ぼす可能性があるので注意が必要である.
観察期間が人によって異なる場合には,むしろCox回帰を用いるほうがよい(表2).Cox回帰は,1972年にDavid Coxが提唱した多変量解析の手法である.ここでは,2値のイベントが生じるまでの時間データ(time to event data)を扱う.観察期間が異なっていても,観察打ち切りのところでセンサリングとして扱える.ただし,センサリングは意図的でないことが求められる.例えば,イベントが起こったときに来院しなくなり,そこで観察打ち切りになるケースは問題である.転居など,観察打ち切りに医学的情報を伴わないことが条件である.Cox回帰はロジスティック回帰よりも多くの情報を取り扱えるが,イベントが多数回起こる場合には適用できない.そのような場合にはポアソン回帰(Poisson regression)という手法を用いる.ロジスティック回帰もCox回帰も,重回帰と同様に,説明変数としてカテゴリー変数と連続変数がいくら入っても構わない.
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