Japanese
English
実践講座 疼痛治療とリハビリテーション・1【新連載】
CRPSの概念とその治療戦略―肩手症候群を中心に
Concept of complex regional pain syndrome and management strategy.
柴田 政彦
1,2
,
井上 隆弥
2,4
,
阪上 学
2,5
,
松田 陽一
2,3
,
住谷 昌彦
2,3
,
前田 倫
2,6
,
真下 節
2,3
Masahiko Shibata
1,2
,
Takaya Inoue
2,4
,
Gaku Sakaue
2,5
,
Youichi Matsuda
2,3
,
Masahiko Sumitani
2,3
,
Lynn Maeda
2,6
,
Takashi Mashimo
2,3
1大阪大学大学院医学系研究科疼痛医学寄附講座
2大阪大学医学部付属病院疼痛医療センター
3大阪大学大学院医学系研究科麻酔・集中医学講座
4大阪大学大学院医学系研究科漢方医学講座
5大阪大学医学部付属病院手術部
6市立西宮中央病院麻酔・ペインクリニック科
1Department of Pain Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine
2Osaka University Hospital Pain Center
3Department of Anesthesiology and Intensive Care Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine
4Department of Kampo Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine
5Osaka University Hospital Surgical Center
6Department of Anesthesia & Pain Clinic, Nishinomiya Municipal Central Hospital
キーワード:
複合性局所疼痛症候群
,
CRPS
,
肩手症候群
Keyword:
複合性局所疼痛症候群
,
CRPS
,
肩手症候群
pp.699-704
発行日 2007年7月10日
Published Date 2007/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100999
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CRPSの概念
1.用語の変遷
複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)は今もなおその病態が明らかでなく,治療法も確立していないという「とらえどころのない」症候群である.よって,その概念を理解するには,用語の歴史的変遷から理解するのが近道であろう.
表1に示すように,CRPS関連の記述は,アメリカ南北戦争の時,神経損傷後に耐えがたい痛みを訴える症例をMitchellが報告したのに始まる.Mitchellは,末梢神経の不全損傷を負った兵士の約10%に,耐えがたい自発痛,運動や軽い接触,感情の変化などによる痛みの増強,浮腫,皮膚および皮膚温の変化,発汗の亢進がみられ,痛みは神経損傷の部位を越えて拡がると報告した1).このような病態は,戦争中の銃弾による神経損傷では起こりやすいが,通常の市民生活のなかではまれな病態で,現在,わが国の臨床医が経験することはまれである.今では,手術や外傷後に発生する神経損傷後疼痛が多く,その大部分はMitchellの報告例ほどは重篤でない.神経損傷後には脱神経による筋の萎縮や交感神経機能異常,アロディニアなどがみられ,その症状の強いものはCRPSの診断基準を満たすことになる.
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