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はじめに
CRPS(complex regional pain syndrome)の理学療法は,一般に痛みによる不動が原因の関節可動域制限に対して,患部の自動運動や疼痛に耐えうる範囲での他動運動が行われてきた.しかし,関節運動による過度な伸張刺激は疼痛の悪化を招き,消極的な自動運動は関節拘縮を作りだしてきた.そのため療法士は運動療法の重要性を理解できていても,積極的なADL(activities of daily living)の拡大を実現することが難しく,適切な運動内容の検討が必要となっている.
田邉ら1)によれば,この課題に対しては神経ブロックと運動療法の併用が有効であると述べている.この方法は2つに大別される.一つは,疼痛部位の知覚神経ブロック後に関節運動を行う方法である.これは感覚を遮断し,他動的に関節可動域(ROM)の拡大を進めるため,積極的なADLの拡大が得られにくいとの指摘がある.
もう一つは,筆者ら2-5)がこれまで実践し検討を行ってきた方法である.これは,疼痛による定型的姿勢運動パターンに対して分離運動,分節的運動を行い,四肢の自発運動を促しながら正常な感覚運動経験を積み重ね,機能的動作の獲得を進める方法である.運動療法後の疼痛増悪に対して交感神経ブロックなどが行われる.これまでの検討結果では一定の治療効果が得られている.ADLの拡大およびROM改善がみられ,同時に他の臨床症状改善にもつながる.しかし,長期経過の症例や栄養障害による症状に課題を残している.また,アプローチが患者個別の問題解決を重視するため,標準的な治療法としてマニュアル化が難しい.
今回は,脳卒中後片麻痺患者の理学療法を進めるうえで問題となる肩手症候群に対する運動療法について,姿勢運動パターンへの介入の実践例を提示し解説する.
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