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はじめに
在宅の重症心身障害児・者(以下,重症児・者と略)の「より良い生活」をめざして,現在,医療・保健・福祉など各分野から多くの具体的な支援活動が行われている.重症児・者にとっての「より良い生活」とは,例えば,現在と比較して「発熱の回数が減ること,リラックスした姿勢で過ごせるようになること,自分の気持ちをうまく伝えられるようになること,食事が上手にとれるようになること,楽に外出できること」などである.これらは,われわれにとってはごく日常的に当然できることであるが,重症児・者にとってはそれらが非常に大きな課題となっている.
この「より良い生活」とはわれわれがQOL(quality of life)と呼んでいるものであるが,QOLという言葉は基本的に本人の感じる満足度を示しており,重症児・者のQOLを評価することは,本人の意志を直接聞き取ることができないため現実的に難しい.また,対象者の家族や対象者を支援する人達が,重症児・者本人のQOLを推測しても,真の主観的QOLとはならない.
そこで筆者らは,在宅重症児・者のためのQOL評価表に代わるものとして“健康・生活・介護評価表(health, life and care scale;HLC scale)”を提案したい.今回,「あなたのお子さんのQOL向上というのは,現状からどんな状態になった(変化した)場合だと思いますか?」という質問に対する重症児・者の家族とリハビリテーションスタッフなどの支援者の回答をもとにして,重症児・者の真のニーズを反映したHLC scaleを作成した.このようなスケールを治療やケアの効果判定に用いれば,重症児・者の「より良い生活の実現」をめざした治療法を開発するうえできわめて有用であろう.エビデンスに根ざした治療・ケア法の確立という研究の流れにも対応している.
以上のことを踏まえ,本研究では,「家族および支援者(リハビリテーションスタッフなど)の考える在宅重症児・者のニーズに根ざした客観的QOL様の評価尺度を開発すること」を目的とし,研究を進めた.
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