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はじめに
いわゆる心身障害と称される状態は,視覚,聴覚,平衡機能,肢体不自由などの各種身体障害ならびに精神薄弱(ちえおくれ)など精神機能の障害をさすのがふつうである.このうち,主たる障害をふくめて二種以上の障害を同一児童が有するばあいを「重複障害児」と呼称している.さらに重度の身体障害,とりわけ重い肢体不自由と,重い精神発達障害をあわせもつ障害児(者)を「重症心身障害児(者)」と呼んでいる.
ところで,この重症心身障害児(以下,重障児と略す)とは,法律上ならびに行政上の概念であって,いわゆる症候群や診断名ではない.そこでこれを医学的に分類整理することは容易でなく,重障児の厳密な定義づけや,医学的な体系づくりをおこなうことは,はなはだ難事といわざるをえない.
しかしながら,こんにち,わが国の社会福祉制度のなかに,重障児施設が組み込まれ,世界的にも例をみることのすくない重障児のための施設療育が全国的な規模で組織的におこなわれていることも現実的な事実である.したがって,たとえ重障児の概念が法律的・行政的に規定されたものであろうとも,これに対して医学的な理解や対応が系統的・科学的になされるべき1)は当然のことといわねばならない.
ところで,重障児のほとんどが,その臨床所見や病理所見,あるいは近年その進歩のいちじるしいCT所見によって明らかにされつつあるごとく,中枢神経系に著明な障害をともなっている.したがって,その臨床像は知的,身体的にいちじるしく複雑な様態を呈している.ちなみに,1979年における全国48個所の公法人重障児施設の実態調査2)によればその主要病因分類は図1のごとくであって,そこに収容される患児がきわめて多岐にわたる疾患を有していることが知られるのである.このように,重障児は複雑かつ広範囲にわたる障害をもつゆえに,その評価をおこなうにあたっても,多方面からのアプローチが必要である.さらに医学はもとより,教育,心理,保育などさまざまな角度からの評価が望まれるのはいうまでもない.
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