Japanese
English
特集 成人脳性麻痺
成人の重症心身障害
Problems of the Adults with Profoundly Retarded.
篠田 達明
1
Tatsuaki Shinoda
1
1愛知県心身障害者コロニーこばと学園
1Kobatogakuen, Aichi Prefectural Colony.
キーワード:
重症心身障害
,
年長化・高齢化
Keyword:
重症心身障害
,
年長化・高齢化
pp.695-698
発行日 1988年9月10日
Published Date 1988/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105917
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はじめに
本稿では,主として施設に入所している成人の重症心身障害について考えてみたい.
かつて重症心身障害児(者)は,なすすべもなく家庭に放置され,家族の者の献身的な介護によって,生命を保つのがやっとの有様であった,昭和32年,全国社会福祉大会の席上で,重症児の父と呼ばれる小林提樹が,この子どもたちの存在を最初に公けに示した.昭和38年になると,作家の水上勉が,『拝啓池田総理大臣殿』という一文を中央公論6月号に載せ,重症児の置かれた窮状をマスコミに訴えた.これは当時,大きな反響を呼び,重症児問題は一挙に世間の注目をあびることになる.
その後,わが国においては,重症児施設は早いいきおいで整備され,家庭に放置された重症児たちが,施設に入所できるようになった.重症児を施設に入所させる当否はさておき,初期の重症児施設における入所児の死亡率はかなり高いものであった.しかし,その後の医療の進歩と,療育内容の向上によって,重症児の死亡率は,現在約2%ほどに落ちついている.
こうして,死亡率の減少とともに,重症児施設においては,入所者の年長化,高齢化問題が起こってきた.入所者の高齢化は,同時に親の高齢化にもつながる.また,入所の長期化がすすむことによって,新規の入所者を迎え入れることがむずかしくもなる.このようにして,年長化にともない,重症児施設では,さまざまな問題が生じてきた.今回は重症児施設における成人の実態とその問題点について提起してみたい.
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