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はじめに
呼吸器疾患,特に慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)の罹患率ならびに死亡率は,全世界的に上昇している.NICE(Nippon COPD Epidemiology)studyによれば,日本におけるCOPDの有病率は8.5%であり1),40歳以上の日本の人口にあてはめるだけでも実に530万人になる1).WHOは,COPDが2020年には全世界の死因の3位に,身体的苦痛をもたらす慢性疾患の頻度として5位になるであろうと予測している.
呼吸不全患者では,呼吸機能低下に伴い労作時に呼吸困難が出現し,息切れへの恐怖感や不安から,座ってばかり寝てばかりの活動量の著しく低下した生活に陥りやすい.このような身体活動量の低下は,四肢体幹筋の萎縮をはじめとする「廃用」を招き,労作時の呼吸困難をさらに増す方向に働く.こうして,呼吸困難,活動量低下,身体機能低下,という悪循環を繰り返し,ADL(activities of daily living)やQOL(quality of life)は低下していく.
この状況を阻止するために呼吸器疾患に対するリハビリテーションが呼吸リハビリテーションである.呼吸リハビリテーションは,1994年のNIH Workshopのsummaryに述べられているように,「肺疾患患者やその家族に合わせて個別的に調整した多次元的サービスで,通常,多くの専門領域のスペシャリストからなるチームによって,患者の自立レベルを最大限に回復し,患者が地域社会で自立して生きていけるようにすること」と定義されている.すなわち,呼吸リハビリテーションは現在では他の分野のリハビリテーション同様に包括的なものと理解されている.運動療法,肺理学療法,適切な教育,不安軽減と呼吸困難克服の自信を回復させる心理的サポート,社会復帰および生活サポートなどを含むものであり,これらを通じて患者のADLやQOLを高めるものである.本稿では呼吸器疾患の包括的リハビリテーションの実際および効果に関して概説する.
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