Japanese
English
特集 生活習慣病と運動療法
生活習慣の改善を得るための心理・行動科学的介入
Lifestyle intervention towards the prevention and treatment of type 2 diabetes using the psychological, behavioral approach.
辻井 悟
1
Satoru Tsujii
1
1天理よろづ相談所病院糖尿病センター
1Tenri Yorozu-sodansho Hospital Diabetes Center
キーワード:
2型糖尿病
,
発症予防
,
生活習慣介入
,
行動科学
Keyword:
2型糖尿病
,
発症予防
,
生活習慣介入
,
行動科学
pp.643-647
発行日 2003年7月10日
Published Date 2003/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100797
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はじめに
習慣的な運動により,冠動脈疾患,脳梗塞,大腸がんのリスクが抑えられ,あらゆる原因による死亡率が低下することが報告されている1).特に,2型糖尿病に対して運動は有益であり,「前糖尿病状態」と考えられるIGT(耐糖能異常;75g経口ブドウ糖負荷試験において血糖2時間値が140~199mg/dlで,正常耐糖能と糖尿病型の中間,いわゆる境界型を指す)対象者の生活習慣(食事+運動)に介入することにより,糖尿病の発症を58%抑制したことが,フィンランド(Diabetes Prevention Study;DPS2))と米国(Diabetes Prevention Program;DPP3))から報告された.
顕性の2型糖尿病では,食事と運動の組み合わせは食事単独より減量しやすく,血糖降下薬の使用も減らすことができる4).にもかかわらず,糖尿病患者の運動実施率は一般に比べて意外に低いというデータがある5).わが国においても,食事指導にかける労力や時間より運動指導にかけるそれははるかに少ないのが現状と思われる.定期的に運動することは食事や薬の調整より労力も時間もかかり,患者にとって重要ではあるが,生活習慣の変容は難しいと感じていることが臨床的にも経験される.このことからも日常診療において,糖尿病患者に対する運動の動機付けを促す介入法が必要とされている.アメリカスポーツ医学会は週のほとんど毎日,中等度の運動を少なくとも30分行うことを勧めている6).
ここでは,この運動目標を達成するための介入がいかに行われたかについて,2型糖尿病発症予防を目的としたDPPと,糖尿病患者に対する取り組みから紹介する.
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