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はじめに
今後35年の間,わが国では65歳以上の高齢者人口の激増が予測されており,2036年にはその数が3,300万人を超すと推察される1).高齢者が激増すれば,それに伴い障害者が激増することは容易に想像ができる.したがって,障害者に対応するリハビリテーション医療にとって,この激増への適切な対処は急務となっている.
高齢障害者の主たる原疾患である脳卒中のリハビリテーションを欧米各国と比較した場合,日本のリハビリテーション医療は,最終到達レベルは高いものの平均在院日数が格段に長いと指摘されている2).この長い在院日数は医療費の非効率的使用となるのみならず,リハビリテーションを必要とする患者が必要な時期に入院できなくなるという問題も生じさせている.しかし一方,現状のリハビリテーションシステムのままで安易に在院日数を短縮した場合は,患者の機能到達度(治療成績)の低下を招きかねない.そこで現在求められているのは,最短の期間で最高の到達度を達成する新しいリハビリテーションシステムである.
われわれは,従来のリハビリテーション医療が長い在院日数を必要とする主たる理由として,治療時間の不足,入院期間中の患者・家族の能動性の不足,チームワークの不足が重要と考えた.そして,これらの問題点を解決しうる新しいリハビリテーションシステム,the Full-time Integrated Treatment(以下,FIT)programを開発し,2000年12月より当院リハビリテーションセンターで開始した3).
FIT programは,空間と情報の共有・統合により,多量(毎日)で高密度(全日)のリハビリテーションを可能とするよう,当リハビリテーションセンターで開発・デザインされたシステムである.ハードウエアとして訓練室一体型病棟(以下,一体型病棟)とLAN(Local area network)を,ソフトウエアとして,療法士複数担当制(以下,複数担当制),データベース参照,患者・家族教育プログラムを有する.概要の詳細は別に報告したので参照されたい3).訓練は,原則として理学療法40分,作業療法40分を休日なしに週7日行う(言語聴覚療法については,症例により週5日,1回30分).週7日の訓練を実現させるために理学療法士・作業療法士は3人で1グループの勤務・治療体制(複数担当制)を組んでいる.6m幅の大廊下を含む一体型病棟を活用して,日中は部屋に戻らないようその生活を誘導する.また,一体型病棟の利便性を生かし,毎朝,看護師―療法士―医師ミーティングをするなど情報交換を密にし,可能となった動作を病棟でもすぐに取り入れ,患者に実行してもらう.LAN上のデータベース,連絡ボードを随時入力・参照し,さらに入院1週間時点で患者・家族教育を小グループで行う.
本研究は,FIT programの治療成績をFIT program開始以前に行った従来のリハビリテーションプログラムの治療成績と比較し,その有用性について検証したものである.
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