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アウトカム研究とは何か
どうしたら医療の質を計ることができるだろうか.こうした疑問に対してDonabedian1)は,医療の質を評価する注目点として,以下の3つを挙げた.
① Structure:医療従事者が利用できる資源や設備に注目するもの.医療施設の規模,従事している人員などが対象となり,評価は最も容易であるが,こうした外形構造だけで評価してよいのかという問題がある.
② Process:医療従事者と患者の間で行われる行為を指すもの.本来は医療行為の中心となるものであろうが,内容が余りにも多岐にわたり,その理論・手法に種々の問題がある.
③ Outcome:医療介入による患者の健康状態の時間変化を見るもの.一定の評価尺度を用いれば定量化が可能であり,測定も容易となる.
第3の注目点,介入前後の健康状態を比較するものが本論文のテーマであるアウトカム評価であり,医療転帰ないし医療成果と訳される医療評価の中心となる流れである.医療プログラムや医学的介入の質,有効性を体系的・定量的に評価するための手法となる.ある目的に対する達成度をみる観点から,治療法の有効性を評価し,治療効果を高めていこうとするものである.
健康状態を測定する試み2)は社会政策上の重要な指標として従来から行われてきた.乳児死亡率などはその代表であり,経済社会的発展度の指標としても広く用いられてきた.こうした従来型アウトカムには罹患率,死亡率,治癒率などがあり,普遍性,定義の明確性,重要性については疑問の余地はなかった3).社会全体の健康状況,衛生状態などを反映する客観的指標であったが,高齢化社会の進行と共に,死なない病気,治癒しない病気はどう考えるかという大問題が生じてきた4).同様に死が避けられない患者にどう対応するかとの問題もある.こうして近年主流となって来つつあるものが,患者立脚型アウトカムであり,各個人の健康観,満足度など患者側の主観的指標を取り込んだQOL(quality of life)評価である3,4).すなわち近年の傾向は,社会集団としての死亡率,罹患率といった統計学的な捉え方ではなく,各個人のレベルでの健康状態を評価するものとなっている.
QOL研究登場の背景には,1 疾患構造の変化,2 患者中心の医療,3 健康観の変化,4 医療資源の有限性,などがあるだろう5).
ただし,立脚型アウトカム,QOL評価はあくまで評価法の一つの手段であり,「QOLの向上」が明白な器質的治癒や機能回復という医療の目的に代わるものではない.
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