Japanese
English
増大特集 リハビリテーション医学2007―最近10年の動向とエビデンス
基礎医学・診断・評価
脊髄の再生
Regeneration of the damaged spinal cord.
大堀 靖夫
1
,
緒方 徹
1
,
山本 真一
2
,
三浦 俊樹
3
,
伊藤 順一
1,3
,
上野 高明
1,3
,
星地 亜都司
3
,
田中 栄
3
,
赤居 正美
1
,
中村 耕三
3
Yasuo Ohori
1
,
Toru Ogata
1
,
Shin-ichi Yamamoto
2
,
Toshiki Miura
3
,
Jun-ichi Ito
1,3
,
Takaaki Ueno
1,3
,
Atsushi Seichi
3
,
Sakae Tanaka
3
,
Masami Akai
1
,
Kozo Nakamura
3
1国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所
2横浜労災病院整形外科
3東京大学医学部整形外科・脊椎外科
1Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities
2Department of Orthopedic Surgery, Yokohama Rosai Hospital
3Department of Orthopedic Surgery, Faculty Medicine, the University of Tokyo
キーワード:
脊髄損傷
,
神経幹(前駆)細胞
,
軸索伸長
Keyword:
脊髄損傷
,
神経幹(前駆)細胞
,
軸索伸長
pp.999-1005
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101058
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はじめに
ヒトを含む成熟した哺乳動物の中枢神経組織は有意な自己再生・修復能力を失っていると,長く信じられてきた1).しかし,近年の基礎研究の多大な進歩によって中枢神経損傷・疾患の再生治療の可能性が実験的に示されている.
損傷脊髄においても,部分的に再生能が残存しており,人為的介入によって,抑制的な脊髄内環境から再生能を引き出すことができると考えられるようになった2).ここでの再生とは,断裂した神経軸索の再伸長のみならず,損傷近傍で失われた脊髄構成細胞(とくにニューロン・オリゴデンドロサイト)の補充も意味しており,さらには,二次的なニューロンやオリゴデンドロサイトの細胞死抑制も,間接的に再生に寄与すると考えられる.移植による細胞補充療法は,このような研究の中心となっており,現在すでに中国やヨーロッパの一部の国で,臨床現場での治療が始まっている3).一方で,軸索伸長の阻害因子の研究も飛躍的な進展をみせ,複数のアプローチによる阻害因子克服が前臨床段階で検討されている.
本稿では脊髄再生に向けた近年の先進的基礎研究の進歩について紹介し,ヒトの脊髄再生療法への応用の可能性について解説する.
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