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はじめに
横断歩道の横断は,時間的な制約を受ける屋外移動場面の一つである.わが国の横断歩道の信号機は,青信号点灯時間が最も短く設定されている場合,最高で1.0m/secの歩行速度が必要となる1).このため1.0m/sec以上の歩行速度を有することは,制限なく屋外を歩行移動する際の有利な体力条件の一つと考えられる.歩行速度と関連する因子としては,年齢,身長,体重,下肢筋力,重心動揺,関節障害の程度などがある2-7).なかでも下肢筋力とは密接に関連し,一定の歩行速度を有するためには,必要となる下肢筋力閾値があることが報告されている8,9).
われわれは,高齢入院患者の等速性膝伸展筋力,脚伸展筋力(主に大殿筋,大腿四頭筋および二頭筋,下腿三頭筋によって発揮される筋力)が一定値を下回った場合,筋力の低下に従って1.0m/sec以上の歩行速度を有する者の割合が低くなることを報告した10).しかしながら,等速性膝伸展筋力の測定は高価な機器が必要であり,また脚伸展筋力の測定は,対象者が比較的小柄な者や低い体力の者に限られる.このため,等速性膝伸展筋力,脚伸展筋力といった指標を用いることが困難な施設も少なくないと考えられる.一方,徒手筋力測定機器は,比較的安価で携帯性に優れるため多くの施設で測定可能であり,われわれの考案したベルト固定を併用した測定方法は良好な再現性と妥当性を有している11,12).
道路横断に必要な歩行速度を有するための下肢筋力カットオフ値が徒手筋力測定器によって得られた場合,多くの施設で適切な移動方法やトレーニング目標値の設定,そしてトレーニングに対する動機づけの有用な情報になり得ると考えられる.本研究の目的は,高齢男性患者が1.0m/secの歩行速度を有するために必要とされる等尺性膝伸展筋力目標値について検討することである.
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