Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
河上肇の『自叙伝』―病跡学的な認識による障害受容
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.978
発行日 2005年10月10日
Published Date 2005/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100201
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昭和21年から22年にかけて発表された河上肇の『自叙伝』(岩波書店)の冒頭部分には,自分を可愛がってくれた祖母のてんかんを思わせる発作に関する記載がある.
明治12年生まれの河上肇は,実母が結婚後間もなく離縁されたため,父方の祖母を母親代わりに育った.ところが,この祖母がしばしば「癪の発作」を起こしたのである.「私の眼には今でも,仏壇の間で人事不省になった折の祖母の姿が,ありありと浮ぶ.ひどい力を入れて手足を硬直させながら,ウンウンいってもがくのを,父と母とが双方から押えつけて,富山の行商人が置いて行った熊の胃を飲まそうとしても,固く口を喰いしばって水も通さないのである.」この時の祖母は,口からブクブクと泡を吹いていたというが,肇少年が祖母と外出した際にも,祖母が突然この発作を起こして困ったことがあった.
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